治療は痛み止めではない

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腰が痛いと来院された患者さんは腰痛がとれれば「治った」と喜ばれます。来院という負担への対価も得られたと満足して、感謝されます。しかしその時に“医師までも感謝にこたえ、完全に満足してしまう”のでは良くありません。 なぜなら痛みを止めても骨の量はまったく改善せず、骨粗鬆症は未治療のまま残っているからです。すなわち骨折しやすい状態は少しも変わっていません。
これは例えれば盲腸(虫垂炎)に痛み止めを注射して「治った」と喜ぶのと同じで、これで喜ぶのでは逆に危険です。 「腰の痛みが痛み止めでよくなった」のを「病気の完全な治癒」と考えるのは「火事で火災報知器を止めて消火したと勘違い」する消防士にも等しいと思われます。
鎮痛は「腰痛症の対症療法」であって骨粗鬆症の治療ではありません。患者さんの方も「骨粗鬆症の治療を受けているのに腰の痛みが少しも変わらない」と不満を言うのは筋違いなのです。痛みを止めるだけなら、むしろ簡単です。強力な鎮痛剤がいろいろとあります。例えば麻酔薬や麻薬を使えば瞬間的に痛みは止まりますが、これでは病気の解決にはなりません。もちろんあまりに強い痛みの時には鎮痛剤で止めてあげて、快適な生活をすることも必要です。
しかしながら腰の痛みとは関係なくじっくり骨を増やしていくことが、基本の方針です。そうすれば、将来骨折しませんから結局は将来の腰痛を激減させることになります。痛み止めだけでは一時は良くても近い将来に腰痛は再発し高頻度に骨折するということを患者さんの方も良く理解して治療を受ける方がよいでしょう。
いまだに「腰痛症から区別して他の病気がなければ骨粗鬆症と診断する」などの時代錯誤の記載がわが国の教科書に残っています。常識のように若い医師に刷り込まれていますが、これも「骨粗鬆症治療は鎮痛」という概念と同根の誤であることに気が付かねばなりません。
二十年ほど前のアンケ−トで、骨粗鬆症の治療薬の第一選択に鎮痛剤を挙げた医師がありましたが、その発想はこの消防士に似ています。例えばカルシトニン投与は骨量増加が目標であり、鎮痛はたまたま付随した利点と考えるべきです。また「骨粗鬆症は生理的老化であり病気ではない」などの誤った先入観念が、わずかでも医師側にあればマイナスの服薬指導として患者にこれが伝わります。この発想を転換することの出来ない医師に骨粗鬆症の服薬の指導は難しいでしょう。誤ったスタンスで患者の「骨折の防止」を願うのは大変な矛盾だからです。
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